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ダンテ『神曲』紹介&感想!読みやすくておもしろい古典文学

こんにちは。

最近、教養系新書への読書欲に目覚めつつあるレベッカ(@revy_ca )です。

じつはですね、とうとうイタリア古典文学の最高峰と名高いダンテ著の『神曲』を読んだんですよ。

結論から言うと、めっちゃおもしろい。

んもー、なんで早く読まなかったのか悶々と後悔するレベルにおもしろいです。

大昔に書かれた古典文学『神曲』が、今でもこんなにおもしろく読めることを多くの方は知らないと思うので、その魅力をわかりやすくご紹介したいと思います。

古典文学だけど……『神曲』、じつはめっちゃ読みやすい!

なにせ文化的な遺産がごろごろ転がっているヨーロッパを代表する古典文学だし、文章自体もお固くて読み辛いのかな~と思うじゃないですか。

わたしもそう思っていたクチで、かなりの気合いをいれて読み始めたのですが……

どっこい、とっても読みやすいのです。

レベッカ

『神曲』は“地獄”→“煉獄”→“天国”の順に旅する主人公ダンテの冒険譚なのです!

そもそも『神曲』は、作者ダンテによる主人公ダンテの叙事詩。

叙事詩と聞いてドキッとした方、ご安心ください。

かんたんに言うと、叙事詩=ポエムっぽいゆるめの小説ってことです。


当時ダンテは、自分が考察したキリスト教に関する教えを、多くの人々に知って欲しいと考えていました。

非常に高い教養も持っていた特急階級のダンテですが、この『神曲』を多くの人々に読んで欲しいと思った彼は、わざわざ市民たちが読みやすい口語体のイタリア語で書き上げたのです。

その考えを訳者の平川祐弘さんもとても大切にしていて、わたしたち日本人でもわかりやすく『神曲』が読めるよう、様々な工夫が凝らされています。

例えば、

・本文が始まる前に、その章のあらすじが必ず載っている

・宗教的な用語への注釈がたっぷり

・有名な文学作家の『神曲 愛好豆知識

などなど……

読みやすいうえに、おもしろい小ネタがたっぷりつまっているのがこの壮大な叙事詩『神曲』なんです。

主人公は「自分」、まさかの夢小説スタイル

この神曲の主人公、なんと著者のダンテ自身です。

とにかくキリスト教カトリックが大好きなダンテは、常に頭の中でカトリック世界を旅していたのでしょう。

その妄想をそのまま叙事詩(物語)化したのが『神曲』です。なんという勇気。


はて。

物語の主人公が「自分」で、読みやすい文体で、ちょっとポエミー……あれ、なんかすごい既視感……

ええ、そうです……思い返すとちょっと恥ずかしい黒歴史が香るこの小説の作り方。

夢小説そっくりなのです。

中学生時代、サーチサイト経由で夢小説サイト漁ってたわたしには、おなじみの物語構成に親しみが止まりません。

心の吐血も止まりません。_(´ཀ`」 ∠)_

突如、異世界に飛ばされる青年ダンテ

しかもこの『神曲』、話の展開も登場人物もやばいです。

とりあえず神曲の第1巻「地獄篇」の紹介あらすじを書いてみたので、まずはそちらをご覧ください。

自分が目指す道がわからず、将来に不安を頂きながら悶々鬱々としている平凡な青年ダンテ。ある日突然「地獄」に飛ばされてしまって……!?

――わけがわからないまま、目の前に現れた憧れの大作家ウェルギリウスに導かれて地獄をめぐるハメに。そこで彼は、世界に名を残した偉人たちに出会う。

罪を償う者、世を偲んで悲しむ者、己の思考に磨きをかける者……死者の世界をめぐり世界の深淵を目にする青年ダンテの冒険譚、スタート!

どうですかこれ。一切、盛ってないですからこのあらすじ。いやほんとに。

めっちゃ異世界転生ラノベじゃないですか……?

わたしの大好きな『Re:ゼロから始める異世界生活』やら『ソードアート・オンライン』の片鱗を感じずにはいられないのです。

しかもカエサルだったりアレキサンダー大王だったり、世界の偉人たちがこれでもかと登場します。

なんなの、Fateなの……?stay nightでZeroでGrand Orderなの?

ダンテさん、現代に生きてたら確実にシナリオライターとして名を馳せていたに違いありません。

きっと奈須きのこ氏や虚淵玄氏と朝まで飲み明かしたことでしょう。

レベッカ

奈須きのこ原作の『Fate/stay night』の前日譚を、売れっ子シナリオライターの虚淵玄が小説化したのが『Fate/Zero』なんだが、神曲にも出てくる偉人アレキサンダー大王がZeroでは死ぬほどかっこいいからみんな見てくれ

読みやすさだけじゃない!『神曲』の魅力

さて、読みやすさばかりに言及してしまいましたが、やはりヨーロッパを代表する古典文学である大叙事詩『神曲』。

人気のハリウッド映画を見ていても『神曲』からの“引用”が非常に多いんです。

古典文学を引用しまくる名作映画といえば忘れてはならないのがブラッド・ピット&モーガン・フリーマン主演のサスペンスミステリー『セブン』。

レベッカ

結末のネタバレをどこかで踏む前にみんな今すぐ見て!

そもそも欧米は“教養” を重視する教育傾向で、かの有名なハーバード大学なんかも、学部ごとの専門課程以上に、教養課程を充実させています。

なので映画を見ていると、ある程度教養があるキャラクターは、あらゆる文学や歴史からその知識を引用し、日常会話にそっと盛り込んでくるわけです。カッコいい。

会話、環境、演出、テーマ……すべてが高い教養の上に構築された映画『君の名前で僕を呼んで』でも神曲の一節が引用されています。

とくにこの映画では、様々な文学作品をキャラクターが引用することで、教養の深さが生活の豊かさや物事への寛容さにつながることを教えてくれます。

文学は、他のメディア作品のテーマ自体に深く切り込んでくる存在なのです。

キリスト教文化を『神曲』から知る

『神曲』はキリスト教(とりわけカトリック)という世界的な宗教を主軸にした教養本。

欧米は文化・生活にキリスト教の考えが深く根付いています。

そこから生まれるエンタメ作品も然りで、ぼんやりと楽しんでいたハリウッド映画ひとつとっても、このキリスト教という文化の本質がわかると、かなり深いところまで楽しむことができるようになります。

訳者平川祐弘さんの解説では、キリスト教の基本的な知識にとどまらず、「カトリック」と「プロテスタント」の違い、キリスト教が影響を与えた芸術文化についてまで話が及んでいます。

正直、『神曲』シリーズを読むだけで、そのへんの教養本より楽しく詳しくキリスト教について学べちゃいます。

日頃この洋画や海外ドラマをもっと深く考察できたらな~と思う方に、ぜひともオススメしたい作品です。

まずはこれから読もう『神曲 地獄篇』

神曲は全3部構成の大叙事詩。気になった方は、1作目『神曲 地獄篇』からお読みください。

ちなみに地獄篇がシリーズ中で一番わかりやすく、一番おもしろいです。

地獄篇は、突如として地獄に放り出されたダンテさんが、(心が)イケメンの師匠ウェルギリウスと出会い、煉獄にたどり着くまでをえがいています。

地獄をウロウロするだけなのに何がおもしろいの……?と思うかもしれませんが、イタリア最高峰の文学にも関わらず、ダンテさん、地獄きちゃって終始ビビりまくりなんです。

そんなところに自分の憧れの詩人が目の前に出てきてきちゃうもんだから、超甘えんぼ全開。

読むとわかりますが、見ていて恥ずかしいほどに情緒不安定な青年ダンテ。それもそのはずで、ダンテはキリスト教カトリックを深く信仰しています。

そんな折、将来に迷えど、清く正しく生きたいと思っていた青年が突如、罪人がその魂を持って永遠と痛めつけられる地獄に落とされるという状況は、キリスト教教を信じている人ほどビビらずにはいられないシチュエーションなのです。


師匠ウェルギリウスのおかげもあって、徐々に落ち着きを取り戻したダンテさんは、漫然と暮らしていた自分と決別し、キリスト教の深淵を探るため、地獄めぐりを敢行します。

旅の道中では、エピソードの端々に訳者平川祐弘さんによる、キリスト教豆知識の注釈解説がたっぷりと差し込まれす。

この注釈解説のおかげで、この『神曲』を基に、あらゆる絵画や文学が作られているのだなと実感できるのも、この作品の大きな魅力のひとつです。

カトリックをディスる解説がおもしろい『神曲 煉獄篇』

地獄篇をおもしろいと感じたなら、煉獄(れんごく)篇もかなり楽しめるはず。

地獄を無事に切り抜け、引き続きウェルギリウス先輩に導かれて煉獄めぐりをするダンテさんの冒険譚が『神曲 煉獄篇』。

ちなみにみなさんは、地獄と煉獄の違いってご存知でしょうか?

・地獄
……生前の罪を、罪の重さに応じた刑罰で永遠に罰せられるところ
 
・煉獄
……生前の罪を、罪の重さに応じた刑罰で償えば、天国へと登れるところ


「煉獄」は字面で見るとめちゃくちゃイカついですが、その刑罰に耐えたら天国に行けちゃうという、じつは地獄よりイージーモードなところなのです。

この煉獄という概念は、じつはキリスト教の中でもカトリック独特のもの。

そのあたりの解説も平川さんが注釈でしっかり解説してくれているのですが、若干カトリックへのディスりが強め(笑)で、それがまた良いスパイスになっています。

レベッカ

本を全部読むのはめんどくさいから煉獄の概念について教えて!という怠け者の方は下記からどうぞ

「煉獄」はカトリック独特の概念という点についてですが、これはプロテスタントとの違いにも深く関連しています。

じつは「煉獄」って旧訳聖書に載ってないんですよね。

あくまでカトリックの“聖伝”として受け継がれているのみの概念なのです。

プロテスタントは、旧訳聖書に忠実な教派なので、基本的には「煉獄」の存在を認めていません。(時期や細かい教派によっては聖書に載せてたりもします。)

じゃあなんでカトリックには「煉獄」のあるの?というと……
これについては諸説ありますが、正直、煉獄という概念がある方が、教会は社会に対して力を保ちやすいんですよね。

「生前になるべくカトリック教会に貢献すれば、罪を犯しても煉獄に行けるよ~最終的には天国いけるよ~」と民に教会の存在をありがたく思ってもらえるいい材料にできちゃうので。

もちろん、「悔い改めた人をなんとか救ってあげたい、救われるべきだ」と多くの人が思ったからこそ、清廉な聖職者や市民(もしくは神という存在)が「煉獄」を用意してくれた……という考え方もできると思います。


さて、『神曲』の世界における煉獄ですが、地獄よりも明るくひらけてはいるものの、罪人にとっては地獄顔負けの恐怖に支配された危ない場所であることには変わりありません。

そんな危険な場所を堂々と先導するウェルギリウス先輩のイケメンぶりが本作の大きな見どころ。

ダンテの「お師匠様すごいフィルター」がかかったウェルギリウス先輩をたっぷり堪能しましょう。

ちなみにわたしは、煉獄篇を読み始めたあたりから作品を解説できる程度にキリスト教への理解が深まったこともあって、会う人会う人に、いかに『神曲』がおもしろいかという話ばかりしていました。

そんな折、いつものように友人に『神曲』のおもしろさを説いていたところ、ウェルギリウス先輩とダンテを、スター・ウォーズのクワイガンとオビワンで脳内再生してはどうかと提案されたのです。

レベッカ

その発想の至高さに天に召されかけました。連れて行くならせめて煉獄にして。

みなさまも『神曲』をお読みになる際は、ぜひご自分のお好みの脳内キャスティングをお試しください。

煉獄篇からは詩的で難解な文章がじわじわ増えていきますが、訳者の平川氏による「森鴎外とか夏目漱石はこの表現のココが好きでね」みたいな小ネタもより楽しくなっていきます。

ぜひ、ご一読あれ。

難解な『神曲 天国篇』……挑戦するかはお好みで

さて、完結作である『神曲 天国篇』ですが、これがどちゃくそ難解です。

じつはわたし自身も未だに読み切っていません。あまりに難解過ぎて、本文と解説を2~3行ごとに行ったり来たり。

レベッカ

正直、ダンテのキリスト教オタクぶりが全開過ぎてついていけない……!

この天国篇が難しいことはダンテ自身もよ~くわかっていて、一番最初の章で「この天国篇な、並の人間にはくっそ難しいから覚悟して読むように」とわざわざ警告してくれています。

なんで難しいの?というと……

「人間が生きるとはどのようなことなのか」といったような精神や世界の構造とその深淵について、 「キリスト教は本質的にいかなるものなのか」 という問答をしながら延々と考え続けるお話なので、とにかくめっちゃ難しい。

読み解くためには、キリスト教への理解はもちろん、哲学的な考え方や、歴史的な教養も必要になってくるので、3部作の中で一番難解な本になっているわけです。

地獄篇と煉獄篇が、キリスト教を学ぶための“入門編”と“基本編”ならば、天獄篇は解説役のウェルギリウス先輩とも煉獄で別れたダンテが、ウェルギリウスを通じて学んだことを思い返しながら、とんでもない精神の高みに思考をめぐらす“超・応用編”といったところでしょうか。

ゆえにこの天国篇、読み切ったら相当な教養が付くこと間違いなし。

キリスト教への理解もかなり深まるので、美術館で西洋絵画を見るのがお好きな方なんかは、この作品を知ってるか否かで楽しめる深度に差がでるはずです。


長々と語ってしまいましたが、とにかく伝えたいのは『神曲』めっちゃ読みやすくて楽しいから読んで!ってことです。

わたし自身、この作品には社会人なってから出会いましたが、できれば高校、少なくとも大学時代には読んでおくべきだったと痛感するほどのおもしろさと教養の深さです。

ひとつひとつの章はポエム風の物語で短く、てスキマ時間にも楽しみやすいので、気になった方はぜひ気軽にトライしてみてください!

それでは(。・ω・)ノ チャオ~!